降り注ぐ雨のように

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「では撮影始めます。お願いしまーす」 その声に従い、私と風吹くんは玄関前に入った。 元々は二人の出会いのシーンを撮る予定でいたけれど、降り続く雨を見た監督が 「この雨生かして撮影しよう」 と急遽、撮影シーンが変わることになった。 雨の中、玲が信吾に傘を差し出す。 読み合わせの時も印象に残ったシーンだ。 監督の指示で一度リハが行われた。 リハ中、緊張で固まる私を見てスタッフは不安げな表情を浮かべたけれど、風吹くんは 「大丈夫。俺は信吾、君は玲。自分が天野恵ということは忘れて」 と私の肩を叩いて微笑んだ。 深く呼吸をした後 「では本番。よーい、ハイ!」 という声が耳に入った。
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