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学校の玄関に立つ信吾。
雨空を見上げるその横顔は吸い込まれるようにきれいだった。
こちらを見た。
ドキッと胸がなる。
目を逸らし、恐る恐る傘を差し出した私は、
「途中まで……入ってく?」
と彼に声をかけた。
「いいよ」
冷たい彼の言葉がチクりと胸を刺した。
「でもこの後、雨やまないよ」
私の言葉に黙り込む信吾……。
「それならずっとここにいる」
えっ?私は一瞬はっと我に返った。
そんなセリフなかった。
どうしよう……とりあえず彼をこのままにしておくわけには……。
焦った私は、傘を差し出す手をさらに伸ばし
「風邪ひくから……入って」
と弱弱しい声で伝えた。
悲し気なこの人を置いてこのまま引き下がれない。どこかでそう思う自分がいた。
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