彼のち、引きこもり。ところによりにわか飴

降り注ぐ雨のように

パンっと勢いよく彼にはじかれた傘は、外に投げ出され、真っ逆さまになってその場で揺れた。
その傘をじっと見つめる私に向かって、彼は
「誰にでも良い顔してんなよ。そういうことは剛士にやってやれ」
と声を投げた。
思わず、私は傘を失った手のひらをじっと見つめた。
そんな私から視線を逸らした信吾は、カバンを頭に乗せ、雨の中を駆け出していった。
残された私は、手のひらにぽつりと落ちた雨の雫を見つめその手をぐっと握った。
「冷たい」
そう言った後、こぼれた涙を、私は握りこぶしでぐっとぬぐった。

数秒の時が経った。
「カット！」
声がかかった後、全員が監督に視線を注いだ。
「……OK！」
その声で、現場の空気が和らいだ。