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「監督、すみません。突然アドリブ入れて」
風吹くんは、そう言いながら監督の元へ駆け寄った。
「いや、あれは良かったと思う。役者も一緒に作品を作ってるチームだ。良いと思うものはどんどん取り入れたい。ただし、ダメだと思ったら全力で否定する」
という監督の言葉にほっとした様子の彼は、メイクさんからタオルをもらい、濡れた髪にそれをかぶせ、わしゃわしゃと髪を乾かしながら、私の元へやってきた。
「あめちゃん、やるじゃん」
「風吹くん、急にセリフ変えたから焦った」
「でもついてきてくれた。それにあめちゃんもアドリブ入れたでしょ?」
その言葉に私は苦笑いを返した。
「やっぱり向いてるよ、女優」
「えっ?」
「あめちゃんは女優向きだと思う」
そう言って微笑んだ風吹くんは
「じゃあ俺、ちょっと次の準備してくる」
とメイク室に戻っていった。
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