彼のち、引きこもり。ところによりにわか飴

降り注ぐ雨のように

その日の撮影はすこぶる順調に進んだ。
シーンを重ねるうちに私も少しずつ緊張がほぐれ、最後の方には
「恵ちゃん、いいね！」
と監督に褒めてもらえるまでになった。

「お疲れ様でしたー。ありがとうございました」
その日の撮影を終え、坂巻さんと共に頭を下げた私にスタッフの人たちは
「また明後日ね」
「お疲れさま」
と声をかけた。

「あめちゃん！」
私は、呼び止めるように言った風吹くんを見つめた。
「明日、大学行く？」
「えっ？あっ、うん」
「じゃあ、明日大学で。またね」
そう言って手を振った彼に会釈をして現場を出ると坂巻さんは
「んーまずいわね」
と声を漏らした。