彼のち、引きこもり。ところによりにわか飴

嵐の前ぶれ

二人で顔を並べ、笑顔の写真を数枚撮った後
「どれが良い？」
と麻帆に確認し、彼女が選んだ写真をSNSを送信する。
「私にも送って」
という彼女の言葉に従うと、麻帆は送った写真を眺め
「恵、本当に撮影うまくなったよね」
と笑った。
「そういう麻帆だって、最初の頃“人を不快にさせないSNS投稿”なんてネット記事読んでたとは思えない上達ぶりじゃん」
「まぁ、仕事だからね。そうじゃなければ絶対やらない」
「私も」
私たちは、モデルの仕事の一環として、SNS投稿をするという決まりを編集部から設けられていた。

やわらかい言葉遣いを選ぶのが苦手な麻帆と、女性が喜ぶ写真のセンスがなかった私は当初かなり苦戦をしながらそれに取り組んだが、最近になってようやくそれが習慣となってきた。
「慣れれば意外と苦じゃなくなるわね」
と少し前に麻帆が言っていたけれど、お互いが確認をしないとついつい「映えない」投稿になってしまう。