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その言葉はまるで、この世界の言葉ではないような気がした。
誰の話をしているんだろうか。
誰が引きこもりになったんだろうか。
私の知ってる陽太は、いつも笑顔があふれていて、高校でもきっとクラスの人気者で、誰からも愛されて……。
彼は絶対に幸せな人生を歩んでいるはずだ。
私がどんなに見返そうと思ったって、彼は私の何倍・何十倍も幸せな世界で生きていて私になんて目もくれない。
きっとそうに違いない。
だからこそ私は彼を越えたい。
どこかでずっとそう思っていた私は、麻帆の発した言葉がいつまでも頭の上でぐるぐると回っているだけで、体の中にうまく入れ込むことができなかった。
「何……で?」
ようやく発した言葉に麻帆は
「さぁ……あっちが勝手にそういう話をしてきただけで、私も詳しくは聞かなかったから。でも、まっ高校で何かあったのかもね」
と興味なさげに答えた。
麻帆にとっては忘れた過去の、ちょっとした世間話。
でも私はすぐにそうは受け止められなかった。
あの陽太が?いったいなぜ?
ぐるぐると回る言葉は、その日一日私の頭の上を離れてはくれなかった。
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