陽のあたる方へ

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「いや。あっ……ねぇ、お母さん。2丁目の晴山さんってわかる?」 「晴山さん……?あーあの弁護士さんのお宅?」 「そう。あそこの陽太くんって今どうしてるかってわかる?」 近所の情報は、母のような井戸端会議世代に聞くのが一番だ。 逆に言うと、母が知らないような事件は、ご近所でもたいして大ごとになっていないと言える。 「陽太くんねー。そういえば最近見ないわねー大学か会社にでも入って一人暮らしでも始めたのかしらね」 やはり何も知らないか。 となるとやっぱりあの噂は嘘だったのかもしれない。 母は私の質問など気にも留める様子もなく 「ちょっと隣に回覧板回してくるわね」 と家を出て行った。 きっと今日も井戸端会議が始まりしばらく帰ってこないだろう。 再び郵便物に目を落としかけた私は 「なぁ……」 という声で顔を上げた。
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