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気が付くとゲームをする手を止めていた兄は、私と目が合うなり
「晴山って、西高の?」
と首を傾げた。
西高……。
そうだ。そこは間違いなく陽太が受験した高校だ。
地元で一番偏差値の高いエリート校。彼が行くべくして行った学校だ。
「お兄ちゃん知ってるの?」
「んー……たぶん」
「高1の時、退学になっていると思うけど」
ドクンっと心臓が鳴った。
陽太が退学?
引きこもりに続き、彼の印象と結びつかない言葉に私は眉をひそめた。
「お兄ちゃん、誰かと勘違いしてない?」
「いや、たぶんそう。高1の時、部活の先輩を殴って退学になってるはず」
彼が人を殴った……。
ますます想像のつかない言葉だった。
なんたって彼は私のことも冷めた目で見つめ、一度もかばってくれなかった男だ。
熱くなるとか、トラブルに巻き込まれるとか、そんなことは彼に一番似合わない出来事だ。
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