陽のあたる方へ

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ただ私は、陽太には幸せであってほしかった。 イケメンで成績優秀でスポーツもできて。 美人な彼女がいて、いつも仲間の輪の中心に立ち笑顔をふりまいている。 私なんかがとうてい敵いっこない。 私のことなんて頭の片隅にもいない。 そんな“余裕”の生活。 そんな陽太を目の当たりにして、私は“ムカつく”なんて心の中で恨み節を唱え、絶対越えてやる!あの人より幸せになってやると奮起する。 それが私の想像する未来の姿だった。 なのにもしも彼が今、苦しい日々を過ごしているのなら、それは私の人生プランを脅かす大事件だ。 胸の内に広がるそんな想いを必死に整理しながら、家の中からの反応を待ってみたが、結局インターホンの向こうから声が聞こえてくることはなかった。
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