陽のあたる方へ

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それ以上、待つことを諦めくるりと家に背を向けた時、私は目の前の光景にビクッと体を揺らした。 「うちに何かご用ですか……?」 買い物袋を握りしめ私を見つめるその人は、訝しげに私の顔を覗き込んだ。 帽子を目深にかぶりインターホンの前にじっと立つ女。 怪しい、怪しすぎる……。 「いや、えっと、あの……」 思わずしどろもどろになる私にその人は 「勧誘ですか?それなら間に合ってますので」 と私の横を通りすぎ門に手をかけた。 陽太のお母さん……だよね。 昔、何度か顔を合わせたことはあるものの会えば挨拶をするくらいで、記憶は薄れている。 それでも何となくその印象が昔より覇気がないように感じれた。
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