陽のあたる方へ

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ふっと、飾り棚に置かれた写真立てに、中学時代の陽太が映る家族写真を見つけ、私は思わずそちらに顔を向けた。 「あの頃はまだ、可愛かったのに」 視線の行方に気づいた様子で放たれたその言葉が耳に入り、私は慌てて写真立てから目を逸らし、陽太のお母さんを見つめた。 「どうぞ」 並べられた華やかなティーカップは、当時の陽太を思い出させる気品が感じられた。 「いただきます」 そう言って紅茶に口をつけると少しだけ緊張の糸がほどけていくような気がした。 「高校の友達にはね、帰ってもらってるの」 ぽつりと言ったお母さんは悲し気に微笑んだ。 「えっ?」 「あの子、高校でいろいろあって。……それを知った上で会いに来てくれたのかしら?」 確認作業をするようにそう言ったお母さんに私はあいまいにうなずいてみせた。
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