陽のあたる方へ

14/42
前へ
/359ページ
次へ
「そう。それなら分かってると思うけど……あの子には会えないわ」 「……どうしてですか」 反射的に聞いたあと、しまったと心の中で声をあげたが、彼女は少しだけ戸惑ったように 「どうしてって……。今まで来たお友達も、あの子の部屋を開けられた人はいないから」 と声を漏らした。 本当だったんだ。 陽太は本当に……部屋に引きこもってるんだ。 かつて入ったことのある陽太の部屋はおそらくこのリビングの真上だ。 ふっと天井を見つめた後、 「いるんですか?」 と聞くと 「えぇ。部屋からもほとんど出てこないから」 とお母さんはか細い声で返した。 陽太がいる家で、ほとんど会話すら交わしたことがない彼のお母さんと話している。 そこに彼はいない。 だけど……いるんだ。この上に……。 そう考えるとなんだか自分はとても奇妙な空間にいるような気がした。
/359ページ

最初のコメントを投稿しよう!

347人が本棚に入れています
本棚に追加