陽のあたる方へ

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「……上、行ってみても良いですか?」 私の問いかけに、お母さんは驚いたように目を見開いた後険しい表情を浮かべ 「無駄だと思うわ」 とため息をついた。 「分かってます。それでも、少しだけ……」 何でここまで陽太の今に固執するのか。 自分でもその答えが見つけられないまま、私はお母さんに懇願をした。 「……いいけど無理やりドアを開けたりしないでね」 「えっ?」 「昔、何とか外に連れ出そうとした時、大声で叫んで物に当たって大変だったの。それ以来、私もあの部屋のドアを自分から開けることはなくなった」 「そうなんですか」 誰に聞いても、どんなに聞いても、あちらこちらから入ってくる陽太の話すべてが、どこか別世界の住人の話を聞いているような気分だった。 「女の子の顔にケガでもさせたら大変だから。ドアは開けたりしないで。何かあったらすぐに降りてきて」
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