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「なんだよ。あめ、こんな所に呼び出して」
面倒くさそうにそう言った彼は、太陽のまぶしさに目を細めた。
相変わらず綺麗な顔をしている。
汗すらも輝いて見える。
のんきにそんなことを考えていた自分の滑稽さを思い出すと、今でも顔から火が出そうだ。
でも私はずっと思っていた。
彼にとって私は特別だ、と。
「あまのめぐみって、天の恵みって書くんだね。あっ!頭文字も“あ”と“め”じゃん!すごい!」
入学してすぐ私にそう言った彼は、その後こう続けた。
「俺も名前に太陽って入ってるからちょっと親近感あるな!よろしくね、雨さん」
ちょっと遠慮のない彼の距離感が、その時は何故だかとても心地よかったのだ。
太陽と雨。
私たちには見えない縁がある。
それから3年間、私は彼にだけ“あめ”と呼ぶことを許し続けた。
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