陽のあたる方へ

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そっとドアに耳を当ててみるとかすかに何かが動いたような気配が感じられた。 いる……。 慌てて顔をドアから離しもう一度声をかけた。 「陽太、いるんだよね?私、中学で一緒だった天野恵。覚えてるかな……?」 もう一度、耳を当ててみると先ほど中でしていた音がピタリと止まったような気がした。 やっぱりいるんだ! 彼の存在が確信に変わった私は、少し悩んだ後、ドアにもたれかかり、その場に座った。 「急にきてごめんね」 やはり反応はない。 一人でしゃべることになるようだ。 ちょっときついかもしれない……。 心が折れそうになりながらも私はぽつりぽつりと言葉を投げかけた。 「同窓会のはがき、陽太のところにも来た?」 「私、行かないんだけど、陽太どうしてるかななんて思い出して」 「ちょっと実家に帰る用事があってね。あっ、私今東京に住んでるんだけどさ」 何度言葉をかけても彼から言葉を返す意思は一切感じられなかった。
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