陽のあたる方へ

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「違うよ。ただ私は陽太のことが心配で……」 「いいよ、そんなウソつかなくたって。自分を振った男がここまで落ちて、ざまーみろとか思ってるんだろ」 「そんなこと思ってないよ」 なるべく穏やかな声を並べてみても、ドクドクと心臓が高鳴った。 少しだけ怖い。そんな気持ちが頭をよぎった瞬間、ぐらっと体が揺れた。 慌てて体を起こそうとしたものの、体の動きに追い付かず、私は床に頭を打った。 「いたっ……」 床に体を投げだしたまま頭をおさえ、目を開けると頭上からぬっと人の顔が現れた。 「陽太……?」 少しずつ状況が理解できてくる。 彼が部屋のドアを開けたんだ。 でも目の前にいる陽太は私が知っている陽太とは全く別の人だった。 伸びきった髪に、無精ひげ、よれよれの服。 かろうじてお風呂くらいは入っていそうかな。
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