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陽太はゴロンっとベッドに寝そべると、そのままこちらに背を向け壁の方に顔を向けた。
「……私は、陽太を笑いたくてここに来たんじゃないよ」
私の言葉にピクリとも動かない彼の背中を見ながら、結局私はまた一人で話すことになった。
「私の知ってる陽太は、いつもみんなの輪の中心にいて、女の子たちからもすごい人気で。頭も良くて、このへんで一番すごい高校に行って。絶対越えられない人だって思ってた。だから越えたいって思ったし、負けたくないって思った。陽太が辛いから良かったなんて思わないよ」
「……そんなのそっちの幻想だろ」
ぼそっと聞こえた声はどこか悲し気だった。
「……私の知ってる陽太は本当にそういう人だったから」
「どうせ、お前だって思ってるくせに」
「えっ?」
「罰が当たった。ざまぁみろって。もう俺なんて、死んだ方がまし。あー死にたい」
体をどさっと動かし大の字になった陽太を見て、私はちらりと目の前の机の上を見つめた。
気が付いたら私は、その机の上にあるはさみを握りしめていた。
その勢いのまま私は、部屋に入り込みどんっと陽太の上に馬乗りになるとそのはさみをぐっと振り上げた。
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