陽のあたる方へ

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「何すんだよ!?」 怒りの表情を携えた陽太の目はどこか怯えているようにも見えた。 「死にたいの!?」 声を上げた私を彼は無言のまま見つめていた。 「本気で死にたいって思ったことある?毎日毎日、学校に行くたびに、からかわれて自分が女であることすら否定された。一番傷ついたのは“あいつ女だったんだ。初めて知った”って言葉。その次は“告白する前は鏡見ろよ”って言葉。私、なんでこんな風に産まれてきたんだろう、私なんて死んだ方がいいって何度も思った」 滴る涙が彼の胸元にぽたりと落ちた。 「でも死ななくて良かった。今の私があるのは、あの時、苦しくても生きたからだ。簡単に死んだ方がいいなんて言うな!そんな逃げ方、絶対許さない!!あの時も、陽太は逃げた。皆に笑われる私から逃げて一緒に笑ってた。もう二度と、あんたを逃がしたりしない!」 はさみに込めた手がぐっと強くなった。 「それでも、それでも……死にたいって言うなら。私がやる!」 自分でも声が震えているのが分かった。 涙にぬれる頬よりも、力の入る右手の方がひんやりと冷たいような気がした。
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