陽のあたる方へ

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「いいよ。やりなよ」 穏やかでありながら、あの日のような冷たい目を携え、彼は私を見つめた。その目にはもう怯えや恐怖は一切感じられなかった。 かっとなった私は、彼の頭に左手を伸ばし、目にかかる前髪をぐっと引っ張ると顔を見つめた。 「もう、これで終わり……」 その声に従うように陽太は目を閉じた。 ザクッ……という音だけが部屋に響いた。 ザクッ、ザクッ……。 繰り返し聞こえるその音を聞きながら、私はただただ手を動かした。 もう既に、心の中は真っ白だった。 自分が何をしているのかさえ、もはや分からなくなっていた。
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