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もうここまで来れば、あとは告白だけ。
タイミングの問題だ。
ミーンミンミン……。
ほらっ、セミたちも応援してくれている。
どこまでもポジティブだった私は、その声に背中を押されるような気分で言葉を発した。
「陽太。私と付き合ってください」
今考えれば、よくもまぁ、あんなにも自信満々だったなと思える。
私は断られるなんて選択肢すら除外していたのだ。
ペコリと下げた頭を上げ、彼に微笑みかけた瞬間、私は初めて異変に気付いた。
冷ややかな目。
しっかりと結ばれた口。
ピタリと止まるシャツを握る手。
さすがの私でも、すぐに気づいた。
“飲み込みたい”
さきほど吐き出した言葉をもう一度、体内に入れる術があるならそうしたい。
そう思った矢先に彼から出た言葉は
「いや、ないだろ」
の一言だった。
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