陽のあたる方へ

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その声に従うように、階段をおそるおそる上る足音が聞こえ 「陽太、何の騒ぎ?」 と不安げな声が聞こえた。 廊下に置きっぱなしになっている私のカバンに気づいたらしき彼女は 「大丈夫?陽太、何してるの?お友達に何か……」 と泣きそうな声を上げた。 「なんでもねーよ!」 陽太の声に続き 「私は大丈夫です!」 と声を張ると、彼女は 「そう……。それなら良いの」 とか細い声を残し再び階段を降りて行った。 その様子を扉の前で見届けた陽太は 「俺のこと全然信用してねーのに、簡単にあきらめた」 と乾いた笑いを浮かべた。 私は黙ってその様子を見守った後、はさみを握ったまま立ち上がり、窓の方へ向かった。
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