陽のあたる方へ

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怪訝な表情を浮かべたままゴミ袋の束と鏡を私にさしだした陽太は、てきぱきと荷物を移動させる私の動きを黙ってみつめた後、切り開かれた袋の上に 「座って」 と言った私の指示にもはや反論の意志を失ったようにおとなしく座ってみせた。 私は底の部分を切り抜いた袋を陽太の頭からすっぽりかぶせた後、彼の後ろに回りひざをつくと、伸びきった髪を軽くひっぱり、 「切るよ?」 と声をかけた。 「……もう、好きにしろよ」 諦めに満ちたその言葉に従い、ジョキっとはさみを入れると、髪の毛はパラパラとゴミ袋の上に広がった。 「安心して。私、昔は自分で髪切ってたから結構センスはあるはず」 「その髪型で女じゃねぇって言われたんじゃないのかよ……」 ぼそっとつぶやいた陽太に 「痛いところつくな」 と苦笑いを浮かべた後、私はチョキチョキとはさみを動かした。
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