陽のあたる方へ

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高校に入学してすぐ陽太はサッカー部に入部した。先輩たちは癖が強い人が多く、半ばいじめのような振る舞いもあったが、陽太は持ち前の愛想の良さですぐに先輩たちと打ち解けた。 その中に一人、厄介な先輩がいた。 正直その人は、サッカーが決してうまいとは言えず、ベンチに座っていることが多かったけれど、持ち前の明るさと調子の良さで、部員の空気がその人の言動に流されやすい部分はあった。 ある時、その先輩が陽太の友人に向かってからかうような発言をした。最初は友人も苦笑いをしていたけれど、途中で腹を立てたように「うるさい!」と発してしまった。 先輩は「冗談なのに」と笑い、その日以降、何となく友人は部で浮いた存在になってしまった。 似たようなことが何度か起き、何人かの部員がサッカー部から去っていった。 何もすることができなかった陽太に順番が回ってきたのはそんな時だった。 練習試合の日、控え選手だった先輩は自分の名が呼ばれるだろうと出番を待った。 しかしその時監督が声をかけたのは、彼ではなく陽太だった。 陽太自身も驚いたが、先輩はショックを受けていたようだった。 その日以来、先輩の陽太に対する態度は明らかに悪くなった。
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