陽のあたる方へ

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陽太はなるべくそれを気にしないように、笑顔で部活動を続けた。 見て見ぬふりをした方がうまくいくことが世の中は多い。そう思って、うまくはぐらかしているつもりだった。 でもそんな陽太の態度が気に入らないと言い出した先輩は、次第に周りを巻き込み陽太に小さな嫌がらせをするようになった。 最初は靴の中に石が入っているとか、カバンがテープでぐるぐるまきにされているとか、自分で何とかできる問題ばかりで、笑ってごまかすことができた。 でも次第にそれは、靴の紐が切られる、財布の中身が減っているなどエスカレートの一途をたどり完璧ないじめになっていった。 そんなある日、部室に戻ると、誰よりも早く戻っていた先輩がニヤニヤと笑いながら陽太の顔を見ていた。 首を傾げ、ロッカーを開けるとスマホがないことに気が付いた。 「先輩、俺の携帯取りました?」 なるべく冗談に聞こえるようそう言うと 「えー俺のこと疑うんだ。お前、ひどいな」 と言いながら、彼はにやりと笑った。
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