陽のあたる方へ

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「ひどい話……」 ぽつりとつぶやいた私に陽太は 「初めて人の悪意に触れた」 と苦笑いを浮かべた。 「まぁ、私なら引きこもりまではしないかな」 なるべくからっとそう言った私に 「お前は、昔からがさつでデリカシーがない」 と陽太は呆れたように言った。 「陽太は、人の悪意に免疫がなさすぎて、心が弱すぎるのよ。もっと頑張りなさいよ」 ポンッと彼の背中を叩くと、陽太はため息をついて首をもたげた。 「お前さ、知らないの?落ち込んでるやつに頑張れって言うなって。外に出れない奴に外出ろって言うなって。そうやってプレッシャーかけると、もっとできなくなるんだって」 そういうものだろうか。 はさみを止めて少し考えた後、 「私は、麻帆が外に連れ出してくれて、楽しくて新しい世界に出会わせてもらえたから……。 がんばって良かったって思うし、そういう繊細な心とかっていうのに鈍いのかもしれない」 と返した。
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