陽のあたる方へ

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「そっか。がんばれって言っちゃいけないのか……。プレッシャーになっちゃうのか」 ぶつぶつとつぶやく私の声に、陽太はふっと笑った。 「お前、心の声駄々洩れ」 久しぶりに陽太が笑った顔を見て、私は少しだけ胸がきゅっと締め付けられるような気持ちになった。 自分の中に広がるその不思議な感情を慌ててかき消し私は、陽太の髪をバサバサとはらった後 「はい。できた」 と彼に鏡を渡した。 「ひげは自分でそるように」 そう言った私の声を聞きながら鏡の前で左右の髪の形を確認した後 「お前、本当にうまいんだな」 と陽太は感心したように言った。 「言ったでしょ。結構センスあるはずって」 思わず得意げにそう言った後、鏡の向こうの陽太と目が合った。 じっと目を見つめ合った後 「本当に綺麗になったな」 と彼は言った。
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