陽のあたる方へ

40/42
前へ
/359ページ
次へ
思わずドキッとして表情を止めた私に彼ははっとしたように 「俺の髪型の話だからな」 と続けた。 そうか、そうだよね。 私ったらとんだ勘違いを……。 「分かってる!」 と言ってうつむいた時、陽太の耳が少し赤くなっているのに気づき、私の顔もほんのり熱くなった。 それをごまかすように 「髪は記憶を宿すっていうから。きっとこれで、その先輩との記憶も縁も切れた」 と私が言うと、彼は 「だといいけど」 とたいして信じてもいないように笑った。 髪を切り終えた私は、彼をベッドの上に座らせ、床に敷かれたごみ袋を片付けた。 その間、鏡とにらめっこをしていた陽太はどこか表情が明るく見えた。
/359ページ

最初のコメントを投稿しよう!

347人が本棚に入れています
本棚に追加