陽のあたる方へ

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しかし私が 「どう。少しは外、出る気になった?」 と窓の外を見て言うと、再び表情を曇らせそれっきりまた口をつぐんだ。 「急には無理か。んーまあ少しずつやってこう」 「えっ?少しずつって……」 何か嫌な予感がする。 そんな不安を顔いっぱいで表現する陽太の顔をしっかりと見つめ、私は宣言をした。 「来週から、学校と仕事が休みの時はここに来るから。まずは部屋の片づけからね」 「本気で言ってるの……?なんでそこまで」 「陽太が元気になってくれないと、私が困るの!越えるべき障害物として、壁としてそこにいてもらわないと。私の頑張る理由がなくなるでしょ」 かたくなにそう言う私に、陽太は首を傾げて言った。 「やっぱりお前、昔から変な奴だわ」 そう言ったきり、陽太が私に 「来るな。帰れ」 というような言葉を投げかけることはなかった。
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