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麻帆に一つ嘘をついてしまった。
そんな私の罪悪感に気づく素振りもなく、彼女は
「あっ、これ最近表参道にできた店のやつじゃない?恵も食べるでしょ?」
と差し入れのチョコレートを私に差し出した。
「うん!ありがとう」
できる限り、明るく1ピースを受け取った後、口に含んだチョコレートは甘さより先に苦さが口に広がった。
「んっ、これおいしい」
私を信じ切った麻帆の笑顔が、その苦さを強調させるようだった。
「麻帆ちゃん、あめちゃん。スタンバイ良いかな?」
「はい!」
お互いに急いで水を口に含んだ私たちは、再びカメラの前に戻った。
カメラを向けられると私は自然に笑顔になる。
こうやって私はカメラの前でも嘘の表情を浮かべるんだ。
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