雨色のキャンディー

5/26
前へ
/359ページ
次へ
翌日、朝早く家を出た私は電車に揺られ、地元の最寄り駅に到着した。 地元に戻る時、実家に連絡をしないのは初めてのことだった。 なんせ、前回帰ってきた時から一週間しかたっていない。さすがの母も怪しむだろう。 陽太の状況は、むやみやたらに広まってほしくない。 そう思った私は、誰にも伝えることなくこの街にやってきた。 深く帽子をかぶった私は、途中すれ違う人たちに目もくれずに、ただ彼の家を目指した。 彼の家の前に立ってチャイムを押す。 以前のように手が震えたりはしなかった。 少し待ってみてもリアクションは帰ってこない。 留守だろうか……。 いや、でも陽太はいるはず。 もう一度チャイムを鳴らした後、私はじっと陽太の部屋を見つめた。
/359ページ

最初のコメントを投稿しよう!

347人が本棚に入れています
本棚に追加