雨色のキャンディー

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「それにしても……部屋は一切片付いてないね」 一周見渡しても、先週来たときと何ら変わりない部屋の様子に頭を抱えた。 「一日がかりかな」 「別にいいよ。このままで」 投げやりにそう言った陽太に 「ダメ!部屋が散らかってると、気持ちももやもやするんだから」 と返すと、彼はため息をついた。 あの頃の私がそうだった。 どこか無気力で部屋に散乱する服にもまったく心が揺れなかった。 散らかってるからってなんだって言うんだろう。 外で張りつめて生きてるのに、家の中でまで頑張りたくない。 部屋の見た目なんてどうでもいい。 ずっとそう思っていた私が部屋を片付け始めたのは自分の心が少しずつ安定した頃だった。 すぐには無理かもしれないけど、部屋が片付けば少しは気分が変わるかもしれない。 「さっ!さっそく始めよう」
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