雨色のキャンディー

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私は、ため息をついた後、手のひらに乗っかったそれを見つめた。 水玉模様の赤い包装紙に包まれ、キュッと両端を結ばれたその飴玉には見覚えがあった。 黄色はレモン、赤色はイチゴ、水色はサイダー。 3色の包装紙に包まれた飴が約20個入ったその商品を、中学生の陽太はいつもカバンに忍ばせていた。 「はい、あめの味」 そう言って陽太はよくその中から水色の包装紙に包まれた飴を私にくれた。 「雨の飴」 と笑った陽太の顔が好きで、私はいつもその飴をギュッと握りしめ 「ありがとう」 と笑った。 当時の光景を思い出した後、色違いの赤い飴を見つめていた私はぽつりと 「恋って飴みたい」 とつぶやいた。
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