雨色のキャンディー

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「恋愛ってそんなもんじゃない。甘くて、優しい味がしても、簡単に冷えて壊れて、そのかけらすらもいつかは消えてなくなる」 「そんなことないよ」 「えっ?」 「もしも飴が消えてなくなっても、ちゃんとこれは残る」 そう言って私は手に握った包装紙を彼に見せたのを覚えている。 「ちゃんと思い出は残る。ずっと心に残ってる」 陽太が私にくれる雨の飴も、私の恋心も、ずっと私の心には残るんだ。 そう思って彼を見つめた私に、彼はふっと笑って言った。 「あめはいいよな。いつも単純で。何かそういうところ一緒にいて楽だわ」 あの時、私はただの1ミリも疑っていなかった。 彼の“楽”という言葉が、私への最大級の誉め言葉なのだと。 そしてまったく気づいていなかった。 彼が語った赤い糸の話が、彼の恋愛への嫌悪感を現したものだと。
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