雨色のキャンディー

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手の平に乗った赤い包装紙の飴を見つめ、当時の陽太の言葉を語り終えると、彼は 「へー」 と感心したようにうなずいた。 「俺、なんか哲学的なこと言ってたんだな」 「自分で感心しないでよ」 そう言ってあきれたように笑った私に陽太は 「でもたぶん……それが本心だった」 と続けた。 「えっ?」 「俺、恋愛とかバカげてるってずっと思ってたから」 その言葉に少なからず傷ついている自分がいた。 自分の気持ちはそんな風に思われていたのか。 思わずぐっと飴を握った私を見て陽太は 「俺、分かんなかったんだ。人を好きとか嫌いとかそういう気持ち」 と悲し気に言った。
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