雨色のキャンディー

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「私の恋心を嫌悪感で終わらせないで。私だけじゃなくて、陽太を好きになった子たち、皆きっと同じように苦しかったと思う。それを“女って変”なんて簡単に終わらせないで。陽太には知ってもらいたい。人を好きになる気持ちも苦しい気持ちも。それでちゃんと、その気持ちを受け止めてほしい。たとえ過去のことでもね。その上で幸せになって。そしたら少しだけ、あの頃の私も報われる気がするから」 声が震えた。じんわり浮かぶ涙を見て陽太は慌てて私に近づいた。 傍にあるティッシュの箱を握り、ぐっと差し出した彼の姿を見て、私の目からはぽろぽろと涙がこぼれた。 「また、あめを泣かせた……」 困ったようにそう言った陽太の声で、ぷつりと何かが切れた私はワーワーと声を上げて泣いた。 「あめが泣いた。雨降った」 あの頃の男子たちの声が耳の中で何度も繰り返し再生されているような気分だった。 呼吸すらも辛くなった私の背中をさすり 「ごめん。ごめん」 と繰り返す陽太の声はどこか悲しく聞こえた。
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