347人が本棚に入れています
本棚に追加
「そういうことじゃないんだけどな……」
こみあげてくる笑いに堪えられず、今度は違う意味で溢れてくる涙をぬぐった私を見て陽太は
「ごめん……俺、こういう時どうしていいかわからない。母さんも俺の前では泣かなかった」
と険しい表情を見えた。
「うん。そっか……」
私は手に握らされた飴をじっと見つめ
「ありがとう」
と一言返した後、包装紙からそれを取り出し口に含んだ。
「甘い」
そう言って私が笑った顔を見て、陽太はほっとしたように笑顔を見せた。
「やっぱり陽太は笑ってた方が良いよ」
「えっ?あぁ……俺の笑顔なんて偽物だよ。いつも作り笑いして、本気で笑ったのがいつか、もうわからない」
「作り笑いでもいいじゃない。私なんて今ずーっと作り笑いだよ」
首をかしげこちらを見た陽太に、私はニッと笑って見せた。
最初のコメントを投稿しよう!