雨色のキャンディー

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「なんかよく分からないけど……陽太、やっぱり頭良いんだね!」 そう言った私を見て陽太は 「相変わらずあめは発想が単純」 とぼそりとつぶやいた。 「うるさいなぁ」 そう返しつつ、陽太には外に出る理由がないのだと私は気づいた。 ある程度、自由のきくお金があって、ネットがあれば何でも買える。 外で誰かに会って傷つくリスクを考えたらこの部屋の中で生きる方が彼にとっては楽なのかもしれない。 勝手に外に出るのが陽太の幸せだと思い込んでいたけど、果たして本当にそうだろうか。 んーっと頭を抱えた私を見て、陽太は何かをさっしたように私のおでこを人差し指ではじいた。 「ない頭で、難しいこと考えるな。とりあえず教えてくれるんだろ?人を好きになる気持ちも、苦しさも」 私の言葉を振り返るように言った陽太のセリフが妙に照れくさくて、私はおでこを抑えながらカッとなる頬の熱さを感じた。 「お手並み拝見といこうじゃないか」 あぁ、私は陽太のこの目が好きだった。 こちらをまっすぐ見据えるその目に、あの頃の私の姿が映ったような気がした。
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