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真っ黒な空と煙。それに対するかのように真っ赤に燃え盛る炎は街を飲み込み、倒れる人々の血を空に濃く映し出している。
絶望の歌が広がる世界。
歓喜の歌を歌うのは体を毛に覆われた人間だ。まるで獣のような彼らの武器はその体。
腕の中で震える彼女は3本の爪に体を引き裂かれ、大量の血を流している。
涙で潤んでよく彼女の顔を見ることができないけれど、その白い肌と赤い瞳、月明かりのような金の髪は例え血で汚れていたとしてもやはり美しい。
溢れた涙が彼女の頬を伝う。
『ミリュ……ごめん、ごめんな、守ってやれなくて…。ミリュ……ミリュぅ…ッ…』
『……なか…ないで…。私、幸せだったよ…。リンクの、隣にいれて……ガッ、…ヴ、ゴッ…』
『ミリュ!…もういいから、喋るな』
『…リン、ク………』
血を吐き出したミリュの口を拭ってあげることができる綺麗な布がない。俺は何も持っていない。何もあげることができなかった。ミリュは沢山のものをくれたというのに。
ミリュの手が自分の頬に触れた。愛おしいその手はいつもよりも細く感じる。小さく、儚い彼女の手。強く握ってしまえば壊れてしまいそうで、優しくそっと触れる。
こんな時になると言いたいことがたくさん出てきてしまう。明日も一緒に笑っていると信じて疑わない数時間前の、昨日の、1年前の自分を殴りたい気分だ。
『ミリュ、次は必ず助けるから…。世界を終わらせる。そして、君を探し出してみせる…』
『リンク……お願い…。この世界を……』
もう一度、やり直そう。最初から。何もかもをリセットするのだ。
こんな絶望で満ちた世界、誰も望んじゃいない。だから、この手で終わらせてみせる……
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