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今度はこっちの番だと言うように、懐いた犬がピッタリくっつくようにしている涼を見た。薫とあんな事があったとはいえ、こんな短期間で雅美にここまでべったり懐くなんて信じられない。
少し留守にしただけで、自分が可愛がっていた犬が知らない人に懐き、自分の事は好きだと言うが主人ではない、そう言われている様で寂しい気がした。
「え……ああ、まぁ。二人が居ない間に色々とあってね。それでこうなったというか……」
だから何? とそんな口調の雅美にきょとんと見上げる涼を見て、優斗はぷっと吹き出した。
「い、色々って……そこを濁してどうするんだ、雅美。俺は涼の保護者として……」
声を高くして焦りながら話す薫の姿は、まるで娘が彼氏を紹介しに来た時のようなそんな動揺の仕方だ。優斗が噴出すのも頷けた。いい大人である涼の保護者であると、まだ子供のように扱う薫に優斗の揺れる肩は止まらない。
「薫……それ以上はもういいじゃない? 僕たちだって言えない事たくさんあったからさ。とにかく、無事だったって事で、この件は終わりにしない? 僕、お腹減っちゃったしさー、何か作ってくるよ。涼くん手伝ってくれるよね?」
ワザとらしく立ち上がって、涼に視線を向けて促す。この場を逃げようと言う合図らしい。鈍感な涼でもさすがに気がついたらしく、はっと顔を上げた。
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