第十話

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「あー、すごい。幸香さんも星奈さんも、自分で浴衣着られてかっこいいなあ。やっぱり、めっちゃ練習したんですか?」  全員無事に浴衣に着替え終え、姿見に映した自分の姿や星奈たちを見て夏目は感嘆の声をもらした。夏目は待っている間に編み込みと花の飾りで髪をアレンジしていて、さらに可愛くなっている。 「そうだよ。めちゃくちゃ練習したよー。確か、高ニの夏に初めて自分で着たんだよね?」 「そうそう。幸香の家に何日か泊まって、幸香のお母さんとおばあちゃんにみっちり教えてもらったの」 「女の子は、ひとりで浴衣を着られなきゃ困るだろうからって」  幸香と星奈は、当時のことを思い出して顔を見合わせて笑った。  幸香の母も祖母もスパルタで、数日間のうちにかなりしごかれたものだ。  初心者が見様見真似で着ても浴衣の形にはなるけれど、すぐに形が崩れたり、歩くと足元が大きくはだけたりするものだ。  そんなみっともないことがあってはならないと、幸香の母と祖母は星奈たちに徹底して着付けを仕込んでくれた。  きっかけは祭りに浴衣で行きたいから着付けをしてくれと頼んだことだったため、なぜこんなスパルタを……と思ったけれど、今となっては感謝しかない。 「さて。そろそろ待ち合わせ場所に向かおうか。金子くんが何て言うか楽しみだね」 「はい! 幸香さんもですね」  幸香と夏目は嬉しそうに笑ってから、連れ立って狭い玄関で下駄を履いて外へ出た。幸香と前川の交際は、いつの間にか公認の事実になった。だから、堂々と恋バナもできる。   彼氏が待つ場所へ向かう華やぐ二人の後ろに、星奈も続いた。  下駄をカランコロンと鳴らしながら三人が向かったのは、神社だ。  今日は夏祭りで、神社が近づいてくると通りには提灯が吊るされ、様々な屋台が並んでいる。  待ち合わせたのは神社の裏手で、そこにはすでに待ち合わせのメンバーが来ていた。浴衣姿の前川とエイジと、それから篤志と金子が。
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