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「……なに?」
ぼんやりとした頭でインターホンの音を聞いて、星奈は突っ伏していた身体を起こした。しっかりと横になる気力もなく、最近はこうしてベッドにもたれかかるようにして眠っている。あまりそういった欲求はわかないけれど、水を飲みたいときやトイレに行きたいとき、この姿勢から立ち上がるほうが楽なのだ。
インターホンは何度も繰り返し鳴らされ、しまいには「お荷物でーす」という声まで聞こえたから、仕方なく星奈は立ち上がった。踏み込む足に力が入らなくてよろよろとしてしまったけれど、1Kのアパートだから寝室から出れば数歩で玄関だ。
「……はい」
「すみませーん。わたくしたち、こういう者なのですが」
玄関のドアを開けてそこに立っていたのは、白衣を着た二人組の男とその後ろに隠れるようにしている私服の青年だった。
しまったと思ったときには、白衣の男のひとりがドアの内側に足を滑り込ませていた。これではドアが閉められない。
いつもなら、ドアスコープからきちんと外を確認してからドアを開けるようにしていたのに、迂闊(うだった。
本来なら予定にない宅配便は受け取りたくないのだけれど、実家が突然何の連絡もなく物を送ってくることがあるから、宅配便業者が来たら応対せざるを得ないのだ。
それにしても、今日はあまりにも迂闊だったと星奈は恨めしく思う。
こんな見るからに怪しい人間が立っていると確認していれば、決してドアを開けることはなかったのに。
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