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「人工知能及び人型ロボット研究所……?」
セールスなら少し話を聞いてから追い払ってしまおうと思い差し出された名刺を確認すると、そこにはそんな胡散臭い文字が並んでいた。でも、名刺と白衣の男たちを見比べると、妙に腑に落ちる気もしてしまう。
どちらの男も、どことなくおどおどしていて、あまり視線が合わない。髪の毛もとりあえず梳かしてはいるようでも、手入れが行き届いているとはいえない。
偏見や間違ったイメージだとはわかりつつも、その二人組の様子や姿は、星奈の中の、研究に没頭して俗世から離れてしまっている研究者というもののイメージと一致した。
「我々は、昨今話題になっている人工知能の研究をしておりまして、その人工知能を載せた人型ロボットの開発も進めております。工場や介護の現場では少しずつロボットが参入しておりますし、家庭用の比較的安価な感情認識ヒューマノイドロボットも発売されたのは記憶に新しいと思います。ロボットと人が生活する時代というのが、もうすぐそこまで来ているということなんですよ!」
真野と書かれた名刺を差し出してきた男は、星奈が話を聞く姿勢を見せると途端に話し始めた。
早口で、よく舌が回る。けれどもそれは用意して覚えてきた文章をそのまま吐き出しているという感じで、星奈の頭にはまるで入って来なかった。
「あの、あなた方がロボットの開発に携わっていることはわかりました。それで、ここへ来たのはどのようなご用件ですか……?」
真野が息継ぎをした合間にようやく星奈がそうして口を挟むと、彼の背後で控えていたもうひとりの男が大きく頷いた。
「それはですね、牧村様にぜひ我が社で開発中の人型ロボットのモニターになっていただきたいということなんですよ!」
長谷川と書かれた名刺を差し出してきた男は真野のように早口ではなかったけれど、その代わりにものすごく声が大きかった。
星奈は一瞬驚いてから冷静になって、すぐに青くなった。
「あの、声の大きさを抑えて」
「いえいえ! これは声を大にして言いたいことなのですが! 我が社のロボットは素晴らしいので、ぜひとも一緒に生活して、できればあと一歩及ばない人間らしさの部分について、情報収集させていただければと!」
「……入って!」
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