最悪のはじまり

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次の日、早く目覚めた私は、久しぶりに学生時代バイトをしていた喫茶店に足を運んだ。 通勤と同じ道を自転車でゆっくり走り、駅の横の歩道橋から線路を超え、国道に出ると海沿いのところに元バイト先、喫茶店マサはある。 重厚感がある木の扉を開け、カランコロンと鐘の音のあとにコーヒーの良い香りが漂ってくると奥から「いらっしゃい」とマスターの声が聞こえた。 玄関口からフロアーに進み、一段下がっている段差をおりると、カウンターの中央に黒い紺色のカッターに腰エプロン姿のマスターが立ち、ちょうどコーヒーを入れていた。 「おはよ、マスター」 マスターがこっちをむいた。 髪は真っ白で黒ぶち眼鏡とだんご鼻に、整った口髭が特徴的な顔が私を見るなり歯を見せ、にかっと笑った。 「おお、健人久しぶりだな。」 「久しぶり」 客は1人もいないのにマスターはコーヒーを いれていた。 「誰の分入れてるの?」 「あ、これ?自分のだ」 「店員はインスタントだろ?」 「俺は特別なの、どれ、 モーニングでいいだろ?」 「うん、よろしくね。」 私がお気に入りの席に行こう背中を見せると、 「コーヒーはいれてやるから、 あとは準備しな!」 マスターはしれっと答えた。 「え~客だぜ?」 「元関係者は客じゃねぇよ。ほれほれ」 そう言って食パンの袋を渡された。 仕方なくカウンター側に周り、パンをトースターに入れ、冷蔵庫からサラダとゆで玉を取り出し、それぞれ皿に盛り付け、トースターのパンを取り出し、バターを塗って、その上から上白糖をスプーン一杯ふりかけ、皿に置き、それをトレーに全て乗せてから、またフロアー側に戻った。 そのタイミングで「はいよ。」とマスターがホットコーヒーを乗せてくれ、モーニングは完成した。 「これで350円はお手頃だろ。」 得意満面にマスターは言う。 「セルフじゃなければね。」 皮肉で返すもマスターは聞こえないふりをしているのか、自分のコーヒーを一口飲み、 「味よし。」 わざとらしく大きな独り言を言った。 そんなマスターを冷ややかな眼差しを送り、私はトレーを持ちカウンターから離れ、 瀬戸内の海と美しい明石海峡大橋を望むことができるテーブル席へと移動した。
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