死ぬほど愛してる続1

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扉が静かに開く。中に入ってきたのは爽のお母さんだった。肩まであるダークブラウンの髪色に優しい目つきをして微笑みを絶やさなかった人。それがどうだろう。髪の毛の色こそ変わらないもののその長さは短すぎるほどで優しい目は赤く腫れ上がり微笑みこそ抱いているもののそれはひと目で作り笑いだとわかるほどで。その原因を作ったのは一体何なのかと誰かに問われなくてもわかっている。自分が一番良くわかっている。アイツと…………そして俺だ。もう3日もたった。最初はアイツからひたすら逃れたくて貪るように爽を求めた。けどそれでも足りなくて、皮膚が赤くなって血が滲むまで掻きむしった。けれど毎日一日じゅう一緒にいてくれる彼の存在によって俺の心に黒いシミを落としたアイツの存在はだんだん薄くなっていた。けれども。        「ごめんなさい。謝って許されることじゃないけど、すいませんでした。」          この家族をこわしたのは俺で。そこだけは嫌というほどわかっていて。時々見せる爽の憂鬱そうな顔も今目の前にいる弱りきってしまった姿を見せる爽のお母さんも。全部全部俺が変えた。それでも、俺が錯乱しなかったのは不思議と心が落ち着いていたからで。頭を下げながら涙が頬をつたってシーツに落ちていくさまを俺は客観的に見つめていた。        「そんな、頭を上げて。」        だが、次に降ってきた言葉は決して罵倒ではなくて抑えようとする涙が止めどなく溢れる。  「むしろ謝るのは私達の方。まさかあの人が稜くんに対してそんな感情を抱いてるなんて露知らずに。怖い思いをさせてしまって。本当に謝っても謝りきれないの。ごめんなさい。貴方を守れなくて。」  心にストンと落ちてくる優しすぎる言葉。もう、俺にはそんな言葉かけてもらう資格なんてないのに。何日泣いたのだろう、何日後悔したのだろう、何日俺とアイツの狭間で揺れ動いたのだろう。爽のお母さんは何も悪くない。全部悪いのは俺で。  「そんな思いつめた顔をしないで。もう辛いでしょう。少しずつでいいから、また爽と外で遊んでやって。」  そんな俺の感情が表情に出ていたのだろう。爽のお母さんは少しだけ柔らかく微笑むと爽と一緒に部屋を出ていった。      「ふっ、くっ。」
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