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『家族の不幸』
『社会への憎悪』
『世界の平和』
(この中から選べというのか…)
一瞬戸惑ったが僕はすぐに決める事が出来た。
その項目をタッチすると突然車が僕に突っ込んで来た。
目の前の景色がグルグル回りながら僕は意識を失った。
それから一年後…
「母さん、お腹すいたよ」
「もう、さっき食べたばかりでしょ」
仏壇の父の遺影に向かって
「父さん、今日も僕たちは幸せだよ」
僕は呟いた。
「ほら、通販で買ったチーズケーキよ」
「ああ、ありがとう」
あの事故で左足が動かなくなったけど僕は母と幸せに暮らしている。
家の外では沢山の瓦礫と死体が転がっている。
父を殺した政治団体が凶悪な武装組織となって警察や自衛隊と毎日戦っている。
いつも銃弾やミサイルが飛び交っている。
あの時のメールに添付されていた声は本物だと思う。
僕は何らかの理由で世の中を憎んで武装組織に入っていたのかも知れない。
世の中を憎んだ僕がどういう風に契約したのかわからないが、きっと世界の滅亡を願ったのだろう。
だけど僕は解約した。それで未来がちょっと変わった。
代償の返品を選んだのも僕だ。
そして今の僕の幸せがある。
家族と一緒にいる限り僕はずっと幸せなのだ。
それ以外は何もいらない…社会も世界も何もいらない…
でもちょっとだけ不思議に思う。
代償が『世界の平和』だった意味を…
まっいいか、今日もケーキがおいしい。
了
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