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照夜はすれ違うときのけせらの横顔を見ながら、色々と考える。(見た感じ、不思議な子な気もするけど、どうだろう? まずはちゃんと話してみないとな)とか(ま、どんな子でも自分が上手く取り持てば関係ないか)とか。
すると、けせらが急に立ち止まる。振り向いて、照夜を確かに見た。照夜の胸が跳ねる。
(何なんだろう、この人……)
そう言葉を残して、けせらはまた歩き出して自分のものになった席に着いた。
予想外の一言に照夜は目を丸くした。
(な、何なんだ……??)
突然けせらから浴びせられた言葉にただただ驚いている。正確にはそういう風に見られただけだが、照夜的にはいきなり冷や水を浴びせられた心情だ。
何でそんなことを言われたのか、少し考えてみる。――特に思い当たる節はない。気持ち悪い表情をしていた可能性も考慮したが、照夜はいつもこのノリで生きている。それで表情の気持ち悪さを指摘されたことはない。
もう少し考えてみる。――やっぱり、わからない。
(休み時間、絶対に話してみよう)
とりあえず、そう決めた。もしかすると、何か誤解されているのかもしれない。もし、そうなら誤解を解けば全て解決だ。
(早くホームルーム終わって一限目終わって、休み時間にならないかなー)
少し怖くもあるが、照夜は休み時間がより楽しみになった。
+++
一限目が終わり、休み時間になる。すぐに照夜は現代文の教科書とノートを片付けて、けせらの席へ向かう。
既に人だかりが出来ていて少したじろいでしまうが、照夜は一つ深呼吸をした。
この人だかりに近付くと、心の声が聞こえてくる。楽しそうに(近くで見ると、結構可愛いなー)と思う声や、気だるげな(なんかあんまり喋らなくてつまんない子だなー)という、皆の何気ない言葉が容赦なく飛んでくる。
そんな人だかりの真ん中のけせらは笑顔を作っていたのだが、照夜が近付いてきたあとに何か驚いた表情をして周りをきょろきょろと見回し出した。
それを見て近くにいた猫の髪留めをした卯月さんに「どしたの?」と聞かれるが、けせらは「いや、何でもない。うん……」と答えた。
久しぶりに沢山の心の声を聞いた照夜は息を吐く。沢山の心の声をある程度聞いて、人だかりに入る心の準備はもう出来た。また大きく深呼吸をする。
「世良さん、初めまして!」
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