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「近場ってどこどこ? やっぱり行った国の民族衣装って着た? あっ、あとあと、大阪って本当にリアルな虎や豹の服着たおばさんがいるの?」
怒涛の質問攻めのせいか、けせらの目はきょろきょろと動いている。卯月さんは「て、てんしい、落ち着いて」と真白の独特なあだ名を呼んで止める。
その様子を見て、照夜はすっと下がり人混みから抜けていった。こうなれば、もう真白の土壇場だ。真白を中心に話が盛り上がり、これでけせらもある程度クラスに馴染めるだろう。
(別に誤解は解けたみたいだし、まっいいか。これで俺の好青年評価にヒビが入ることはなかろう)
照夜はそんなことを思い、自分の席へと戻っていった。
***
照夜はお弁当を持って中庭に向かう。
「直火ー! 立花さーん!」
既にベンチに座っている男女に向かって、声を弾ませた。
昼休み、いつも照夜は教室の外で直火たちと一緒に昼食を食べる。ポニーテールのいかにも活発そうな雰囲気を纏った少女――立花 都にはあまり快く思われていないが、特に何も言ってこない。
なので、照夜は特に気に留めることなく直火の隣にいつも座っている。
「今日はこっちが遅かったかー」
「月曜だから、古文だっけ? 照夜のクラス」
「そうそう。直火と立花さんは英語だよね」
いつものように何気ない会話が始まる。主に照夜が直火が会話を主導していて、都は聞き役に徹していることが多い。
「心見くんのとこ、転校生が来たんだよね?」
そんな都が珍しく照夜に話を振ってきた。照夜は少し驚きつつ嬉しくもあった。
「うん。世良けせらって子。ちょっと老木みたいな雰囲気があるかな?」
照夜の返答に都も直火も目を丸くする。
「ろ、老木……?」
都は心底不思議そうな声を上げた。彼女の頭には枯れかけの痩せ細った木のイメージが広がっている。
「それ、なんか酷くないか?」
直火は苦笑いをして照夜に言った。直火の頭の中の老木は照夜が思い描くのと同じでがっちりとした葉が繁ったものだが、きっと都がイメージした老木もわかっているのだろう。
「あー、あっいや、なんというか、老木っていうのはがっちりした感じの木で、森林系の雰囲気があるというか。神秘的というか、不思議な雰囲気がある子なんだよね」
「へ、へぇー……」
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