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我が世の春
我が世の春がきた!
小・中・高と己の才を一切発揮することなく無為に過ごし、彼女はおろか女子とまともに会話した記憶すらない俺だが、大学生活二年目にして悲願の恋人を獲得した。
吉井紗季子、俺と同じく経済学部の二回生でゼミが同じ、俺は「さっちゃん」と呼んでいる。黒髪のあどけない顔立ちのかわいらしい女性だ。
一目見て彼女にフォーリンラブした俺は、ストーキング一歩手前の地道な情報収集によって彼女の行動パターンを分析し、偶然を装った作為的な出会いを積み重ねていった。最初は当然、彼女を楽しませるような話などできるはずもななかったが、『バックトゥザフューチャー』が好きだったり、自動車学校をサボりがちだったり、朝が苦手で冬は一切日の光を浴びずに過ごすこともあるなど……徐々に会話の時間が延び、さっちゃんとの距離が急接近したのである。
これはもう、運命と言って差し支えあるまい。
「ああー一点返されちゃったよスバル……」
「今の、シュートだったのかなぁ。クロスがたまたま入ったように見えない?」
「うん、そう言われるとそういう風に見える」
「まだ一点勝ってる、ここからだよ!」
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