我が世の春

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 サッカーワールドカップ、日本代表は散々な前評判を覆しグループリーグを突破し、決勝トーナメントで強豪ベルギーと対戦している。現在スコアは2対1。  俺の住むアパートの一室で、日本代表運命の一戦を二人して観戦している。 「普段サッカー観ないけど、やっぱりワールドカップだと見ちゃうね」 「俺も普段スポーツとか見ないけど、今日の試合は熱いよなー」 「うん、でも今日がすごく楽しいのは試合展開というよりも……」  さっちゃんが顔を伏せてもじもじしている。得点して勢いづいたベルギー代表が日本代表に猛攻を仕掛け、試合は目を離せない状況であるにも関わらず。 「スバルと一緒に観てるから、楽しいんだと思うの」  さっちゃんが顔を上げる。視線の先にあるのはテレビではなく、俺だ。 「さっちゃん……」  目をつむる彼女に身体を寄せ、俺はそっと口づけをした。  唇を離し、さっちゃんとしばし見つめあって、それがなんだかおかしくて二人して吹きだしてしまった。  お互いの手を握って、日本とベルギーの死闘をBGMにして夏休みの旅行先について話し合った。     
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